父と宗教、そして語り合い
いつだったか、父から問われたことがある。
「宗教についてどう思う?」
結婚を機に無宗教・教から改宗した私は、その質問におそれおののいた。
正しく答えなければいけないと必死に頭を巡らした。
端的に、わかりやすく、重要な点を伝えようと。
しかし、今思えば、そんなことは必要なかったのだ。
父と共に考え、語り合えばよかったのだ。
そうすることで父の迷いや考えの深さを知ることもできただろう。
そのときの私は、無宗教・教であろう父を導くことができればと思ってしまった。
私の方が父より信仰が深いなどと誰が決められるのだろう。
もっともっと語り合いたかった。
体の具合を聞くこと、日常のちょっとしたつぶやきを受け止めること。
それ以上にできることはもっともっとあった。
言葉を丁寧に選び、穏やかに話す父はもういない。